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『DOA6』の追加キャラクターは? バトルの調整は? 現状と今後について新堀洋平氏が語る。システムに関するマニアックなことまで聞いた『デッド オア アライブ 6』発売記念ロングインタビュー(ファミ通.com) - Yahoo!ニュース

文・取材・撮影:西川くん

 3D対戦格闘ゲーム『デッド オア アライブ』シリーズ最新作である、『デッド オア アライブ 6』(以下、『DOA6』)が、2019年3月1日に発売された。そこで、『DOA6』の発売前にプロデューサー兼ディレクターの新堀洋平氏に実施したインタビューを掲載。最後には、発売後に新堀氏に追加で聞いた質問もあるので、ぜひ読んでみてほしい。

“揺れ”表現はさらに進化する!?

――本作は以前の発売日より、約2週間の延期を経て発売となりました。延期した期間中、具体的にどこを改善したのですか?

新堀 お待たせしたのは本当に申し訳なく思いますが、不具合の修正やバランス調整を入念にできたのは大きいです。オンラインベータテストを実施したので、ネットワークまわりの調整と、いただいた意見の反映も行えました。

 それと、セクシーな表現を追求できたことも。世界中で遊んでいただくことを目標にしてはいますが、セクシー表現は、やはり本作では欠かせない要素です。「もう少し柔らかくできないかな?」などと、ギリギリまでこだわりました。でも、まだ納得していません。

――というと、いわゆる“乳揺れ”表現などは、まだまだこれから進化すると……?

新堀 もちろんいまでも、しっかり揺れます。ですが、私が持つ“揺れ”へのこだわりや情熱みたいなものは、まだまだ盛り込めていません。ほかのアップデートとともに、揺れの表現を強化する気マンマンです!

――期待しています! ですが、『DOA6』の発表当初は、揺れの表現がないと思っているユーザーも多かったように思います。

新堀 そんなことは一度も言っていないのですが、“eスポーツを意識している”という発言がそう誤解されたのかもしれません。そして、実際に発表当初は揺れていなかったんです。

――それは何か狙いがあったのですか?

新堀 ゲームエンジンが完成していなかったんです。『DOA6』は、ゲームエンジンをイチから作り直しました。『DOA5』までは、初代『DOA』からシリーズごとに改良を重ねたエンジンを使っていたんです。ですが、増築に増築を重ねたエンジンなので、大きな変革を加えたら、全部が崩れてしまうような脆さがあって。

 ですから、一部の重要なパーツだけは残しつつ、新しいエンジンを作り上げました。ただ、これがあまりにも時間が掛かってしまって……。また、かすみの新衣装がピッタリとしたスーツなので、さほど揺れないというのも、誤解を招いてしまったのかなと。衣装の素材によって、揺れかたを変えるようにしているので、ほかの衣装ではしっかり揺れます。ただ、クールな衣装がデフォルトになっているのは、やはりワールドワイド展開を考えてのものです。ほかの衣装はもちろんセクシーなので、“脱いだらスゴい”的な感じなんです(笑)。

――実際、世界のプレイヤーたちからはどんな反応がありましたか?

新堀 これまで『DOA6』発売に向けて、世界各国のメディアを旅するかのようにPR活動をしてきました。セクシー表現にきびしい時代の流れというのはわかっていますが、それ以外にわかったことがあったんです。日本人から見ると、海外の方々は求めるものが、すごく極端なんですね。もちろん、全員ではなく平均的に見た場合に、ということですが、たとえば、暴力表現も突き詰めたものがいいですとか、セクシー表現も出ることろは全部出せ! くらいの感覚なんです。日本人は、こうちょっとしたチラリズム的な、微妙なニュアンスもイケますよね。

 そして、逆方向にも極端です。ほんの少しでもセクシーだと、ものすごく恥ずかしくて遊べないという人もいて。かすみのデフォルトの衣装は肌の露出や揺れがほとんどありませんが、それでもちょっと揺れるので、恥ずかしいと言われるくらいです。揺れ表現をオフにできることを説明したら、「これなら遊べる!」って言われたくらいです(笑)。ですから、今回暴力表現、揺れ表現のオンオフが大事なのだと思いました。

――表現といえば、フェイシャル表現の強化も見どころですよね。なかでも“ブレイクブロー”での顔の歪みは衝撃的でした。

新堀 とくに男性キャラクターの顔はうまくいきました。バトル中の顔なども、男性キャラクター全員がすごくカッコいいんです。この表現、女性キャラクターではできないんです。表情をこわばらせて作りすぎるとシワが増えてしまって、たとえばキュートなマリーちゃんではなくなってしまいます。ですが男性キャラクターは、シワがあってもカッコいい。『DOA』シリーズは女性キャラクターの魅力はもちろんお伝えしていますが、今回は男性キャラクターにもぜひ注目してほしいです。

――ちなみに、ブレイクブローで顔面がアップになって殴られる演出がありますが、マリー、ほのか、NiCOには導入されていませんよね。しかも、試遊版などの以前のバージョンには演出がありました。それはなぜですか?

新堀 プレイヤーから、「アップで殴られる姿を見るのはイヤだ!」という声が圧倒的に多かったんです。現状はアップになりませんが、またプレイヤーからの反応をうかがおうかなと思っています。少なくとも、東京ゲームショウ2018での試遊では、悲鳴が聞こえるほど、マリーやほのかが殴られる姿を嫌がる人が多かったです。また、“DOAフェス2018”(『DOA』シリーズの大会やコスプレコンテストなどを行う公式イベント)でも同じような声があり、とくに『DOA エクストリーム』シリーズのファンからは、彼女たちが殴られる姿を見て衝撃的だったという声もありました。

――ですが、もともと『DOA』は対戦格闘ゲームですよね?

新堀 『DOA5』ですらもう何年も前ですし、『DOA エクストリーム』シリーズしか知らない、という人も多くなりました。“DOAフェス2018”で、あやねがワープしてる!? ほのかの手から火が出てる!? と、驚くプレイヤーも多かったようです(笑)。

――そんなことが(笑)。今後、プレイヤーの反応があれば、アップにする可能性もあると。

新堀 そうですね。現状でもオフにできるので、見たくない人は暴力表現をオフにしてもらえればいいですし。

――では、先ほどお話に出た、新しいゲームエンジンでの制作は、いかがでしたか?

新堀 これがまだまだ改良が足りず、正直難しいです。ですが、クオリティーの高いものは作れます。作りにくいまま、がんばって走ったという感じです。開発環境を改善して、よりよいゲームエンジンにすることも、今後の課題となっています。

――そんな中、開発していて思い出深いエピソードなどはありますか?

新堀 忘れられないのは、ゲージシステムを採用したときのことです。ゲージを絡めた攻防が『DOA』に合ってるのか不安だったのですが、いざ完成してみるとすごくマッチして。これはいけるぞと、自信につながりました。

NiCOとディエゴのコンセプトは?

――新キャラクターのNiCOは、どんな狙いで制作したのか、コンセプトを教えてください。

新堀 NiCOの目標は、マリー・ローズ以上の人気を獲得できるような、いままでにないキュートなキャラクターを作ることでした。原型が完成した後で、もっともっとかわいらしいNiCOを生み出すために、デザイナーたちを集めて話をして、髪型を変えたり、装飾を変えたりと、試行錯誤を重ねたんです。そして、いまのNiCOが誕生した瞬間は「よし、これでマリーにも負けない!」と叫びました(笑)。

――ストーリーモードのシナリオとしては、NiCOがかなりヒール役として絡んできますよね。

新堀 DOATECから分離した悪の組織“M.I.S.T.”が誕生しましたが、新たな悪役が必要だったんです。とある目的を達成するために天才的な科学者が暗躍する、という設定でしたから。

――もうひとりの新ファイター・ディエゴは、かなりワイルドなキャラクターですよね。

新堀 ディエゴは、北米のプレイヤーの方をターゲットにしています。バックストリートでケンカをしていそうなキャラクターで、初心者でも遊びやすい能力にしました。そのおかげか、北米プレイヤーからの人気は、かなり高いですね。

――最初から26人ものキャラクターを登場させたのは、相当な苦労があったのでは?

新堀 そうですね。ですが、みんな出してあげたかったんです。今回は、まずストーリーを語るのに必要なキャラクターを考える手法を取りました。そこで外せないキャラクターを当てはめていったら、現在の26人になったんです。いま思えば、多すぎましたね(苦笑)。何かを調整するたびに、すべてが26倍になって返ってくるので……。ただ、苦労したおかげで、プレイヤーの皆さんには、満足してもらえるものになったのかなと思います

――これまで登場していたファイターの中では、ゲン・フーがいませんよね。

新堀 物語的にチョイ役として出すことは可能でしたが、ゲン・フーほどの人物をそれだけのために出すのはどうだろうと、悩んだ末に登場させませんでした。ただ、何も決めていませんが、今後追加の可能性はあります。

――それは楽しみですね! それと、紅葉やレイチェルは、『NINJA GAIDEN』シリーズとのコラボキャラクターだったので参戦していない、ということなのでしょうか?

新堀 その通りです。『DOA エクストリーム』シリーズにも紅葉が登場しているので誤解されますが、彼女たちは『NINJA GAIDEN』シリーズのキャラクターなので、出すたびにしっかりと社内で確認を取るようにしています。それはリュウ・ハヤブサに関しても同じで、両方の世界で活躍するキャラクターですから、コスチューム含めて協議を重ねているんです。

――そんな裏話があったのですね。ストーリーのお話も聞きたいのですが、今後エピソードが追加されることはありますか?

新堀 じつはシナリオやボイスなどを用意していたものの、都合により泣く泣くカットしたというエピソードが30個くらいあります。それをどこかで追加したいとは思っていますが、簡単に作れないからカットしたわけでして……。また、追加キャラクターたちにシナリオを用意するものすごい労力なので、できればやりたいとは思いますが、残念ながらお約束はできません。ただ、個人的にはどちらも追加したいとは思っています。これは本作がヒットすれば、実現できるかもしれません。

――予約特典キャラクターの女天狗については、すでにシナリオがありますよね。

新堀 それも本来はカットするはずだったものの、無理をしてでも入れることにしました。本来ストーリーラインには必要ないのですが、個人的にどうしても入れたくなってしまって。というのも『DOA エクストリーム』シリーズに女天狗が登場してから、とても人気が高くなったんですよ。セクシー系のキャラクターはやはり必要だろうと、どうにかして発売に合わせて登場させました。

――デラックス版特典のフェーズ4も、同じような理由ですか?

新堀 じつは開発当初、発売時の参戦キャラクターは25人の予定でした。フェーズ4はシナリオでは最初から登場する予定でしたが、プレイアブルキャラクターではなく、コンピュータ専用のキャラクターにするはずだったんです。でも、やはりフェーズ4を使いたいという声が多かったですし、ゲームに登場しているのに遊べないのは、モヤモヤしてしまうだろうなと。ですから、本当にギリギリのタイミングでしたが、フェーズ4をなんとかプレイアブルキャラクターにしました。

――なるほど。また、シナリオでは、ほのかがメイン級のヒロインで描かれていましたが、なぜほのかがメインに?

新堀 『DOA5』シリーズで語られていなかったということもありますが、じつは『DOA5 ラスト ラウンド』からこのシナリオの核の部分は考えていまして。じつは、『DOA5 ラスト ラウンド』にシナリオを追加しようとしていたくらいです。残念ながら叶いませんでしたが、今回『DOA6』で描くことができました。

細かな部分について聞く!

――今回、“DOAクエスト”を導入した狙いを教えてください。

新堀 『DOA』シリーズはやり応えがあり、やり込めばやり込むほどおもしろいゲームです。ですが、多くの人はそのおもしろさを知る前に、諦めてしまうことが多いです。これまでコスチュームだけを集めたい、というプレイヤーはアーケードモードを何度もプレイして衣装を集めていましたが、それでは格闘ゲームとしてのおもしろさが伝わらないのではと。

 そして、これまでの『DOA』シリーズは、ゲームをもっと遊びたくなる仕組みになっていなかった、ということもあります。そこで、まずミッションを用意して、クリアーできない場合はチュートリアルで学んで、ミッションを再度クリアーするという流れを作り、しかも衣装の設計図が多めにもらえるという仕組みにしました。

――たとえば“エキスパールドホールドを決めろ!”というお題がありましたが、ゲーム側から答えを出さずに、トレーニングモードなどで技表を確認する必要がありますよね。一見わずらわしいのですが、“調べる”という行為があることで、楽しく学べるのだと感じました。

新堀 そうなんです。答えを先に出すのではなく、このキャラクターならどうなんだろう? と自分で探して、考えてもらうのも上達方法のひとつなんです。また、“特定の技をヒットさせろ!”というお題を用意しているのは、開発側からのオススメ技のひとつだからです。実際に当ててみて、どんな効果があるのかそこで確認してもらう。ですから、DOAクエストモードは、チュートリアルのひとつみたいなものなんです。

――チュートリアルと言えば、今回のチュートリアルは前作以上にみっちり詰まっていますよね。

新堀 ええ、わざわざメニューに“すべてクリアーしなくてもゲームは楽しめます”と書いたくらい、最後までやるのはたいへんなほど詰め込みました。それくらい、基本的な疑問はすべて解消できるように、すべてを入れ込みましたね。というのも、『DOA』シリーズは対戦格闘ゲームでありながら、対戦格闘ゲーム部分にあまり興味がないというファンの方も多いです。もちろん、対戦格闘ゲームが苦手だという人もいますから、それはしかたのないことです。ですが、そういった人たちも“対戦格闘”で楽しませたい、魅力を知ってほしいと考えているんです。見た目だけ楽しむのは、家の門をくぐったところです。対戦という玄関まで、ぜひ入ってきてほしいんですよね。

――ゲーム部分もぜひ楽しんでいただきたいですね。ステージの話題になりますが、“DOAミュージアム”ステージは懐かしい要素がたっぷり詰まっていて、感動しました。

新堀 最初は『DOA』の集大成的なテーマパークを作ろうと思ったのですが、設計が難しかったことと、現在のDOATECのトップがエレナなのに、テーマパークではちょっとイメージと合わないと思いました。また、以前から“相手をジオラマの中に吹き飛ばして闘う博物館ステージ”を考えていたんです。そこで、アイデアをふたつ合体させて、“DOAミュージアム”にしました。

――これまでもメチャクチャなデンジャーはありましたが、プテラノドンやクラーケンが登場するなど、デンジャーはいままで以上に現実離れした演出になっていますよね。もちろん、『NINJA GAIDEN』と同じ世界観なので、そりゃ出るものは出るとは思いますが(笑)。

新堀 『DOA』の物語としても、遺伝子操作とかクローン体の生産をやってますから、世界観としてはSFなので、おかしくはないかなと。また、メカもののデンジャーはやり尽した感もあり、今回は“生物”をテーマにデンジャーを作りました。たとえば、押し返してくる観客たちのデンジャーも、そのテーマです。

バトルについて

――今回、オンライン対戦はとても快適になっていますよね。オンラインといえばやはり“ラグ”の問題がありますが、調整などの苦労はありましたか?

新堀 『DOA5 ラスト ラウンド』もそうでしたが、本作もゲームシステム自体がオンラインにさほど強い構造というわけではないんです。なぜかというと、0フレーム(フレームは時間の単位)ですぐに発動できる“ホールド”があるので、レスポンスがよくないといけないんです。レスポンスを追い求めて非同期型の通信も検討したのですが、やはりこのホールドの仕様が最大のネックとなりました。そのため、今回も完全同期型の通信方式にして、無駄な通信を極力削ぎ落としていきました。

――試遊やベータテストなどの意見で、対戦に関わるもので反映したポイントはありますか?

新堀 おもにゲージまわりですね。本作は初心者でも遊べるように設計したので、ブレイクブローが現状でもバンバン出せます。ですが、以前はもっとゲージが貯まったので、より連発できたんです。そこは少しだけ緩和して、ちょうどいい具合になったと思います。

――ブレイクブローキャンセルや、フェイタルラッシュの途中止めなど、発売前はあまりアピールされていなかったテクニックが多数ありますが、それは当初から予定していたものですか?

新堀 一部は最初から予定していました。最初は、必殺技を作ろうというところから始まったので、まずクリティカルスタンシステムの見直しからスタートしました。クリティカルスタンを継続してコンボを決めるという要素は、駆け引きを好む人が多い日本での受けはよかったのですが、攻撃的な展開を好む欧米だと「読み合いが多すぎる」という意見が多かったです。

 だったら、今回はもっとシンプルに考えてみようと、クリティカルスタンからの浮きの高さなどを『DOA2』のイメージで調整し直しました。また、駆け引きが好きな人であっても、大きく読み勝って相手を一方的に攻撃できるタイミングは、やはりほしいですよね。そこで考えたのが “スーパークリティカル”というもので、それが現在のフェイタルスタンであり、フェイタルラッシュなどが生まれる原型なんです。

――そこから派生して、ブレイクブローなどが生まれると。

新堀 ブレイクブローは最初、相手に打撃を何度も叩き込む、いわゆる“乱舞技”として作りました。ボコボコに相手を殴って、最後にドーンとカッコよくキメる、と。ですが、それだと『DOA5』の“パワーブロー”とあまり変わりませんし、ほかのゲームでも多いですよね。それじゃおもしろくないので、考えかたを変えて、“自分の操作で乱舞技を組み立てて、最後に必殺技をブチ込む”というものにしようと。

 だから、ブレイクブローはシンプルな単発技になりましたし、フェイタルラッシュの途中止めも自由なんです。それは、当初の予定からそうでした。ただ、ブレイクブローキャンセルは後から考えた要素です。『DOA』は、自分で取った行動すべてに、責任を負うゲームですから、キャンセルしてコンボを伸ばすのもいいですが、当然キャンセル後にミスったり、ブレイクホールドで割り込まれたりする。そういった選択の幅を持たせたかったんです。

――フェイタルスタン誘発技、カウンターフェイタルスタン誘発技は、どういった経緯で生まれたのでしょうか?

新堀 『DOA5』の尻もちスタンからの派生ですね。あれは、海外では人気のシステムでしたが、日本ではさほど人気のないシステムでした。ただ、読み勝てばほぼ確実にコンボを決められる技がある、というのはおもしろい要素ですよね。その発想で、単発のフェイタルスタン誘発技や、サイドステップ中の相手にフェイタルラッシュ1段目を入れると相手が背向けになるといったシステムが追加されました。

――スタンといえば、よろけ回復が廃止されたのはなぜですか?

新堀 読み合いに集中してほしいからです。もちろんそこで、テクニックの差が出るから、やりがいがあるという意見も分かるんです。ですが、よろけ回復はユーザー全体で見れば本当に一握りの人間にしか使いこなせなかったシステムですし、攻撃を食らうたびにレバーをガチャガチャ操作するのは、身体能力の差が出てしまうし、コントローラーも摩耗してしまってスマートではないかなと。だったら、もう完璧に読み合いに集中し、読み合いでプレイヤーには勝利してもらいたい、という考えから今回廃止となりました。

――あとは、空中バウンド誘発技が追加され、コンボバリエーションが増えましたが、あれはどういった狙いがあったのでしょう?

新堀 あれは新しいコンボの流れを作るべく、バトルディレクターが考案したものです。私にとっては操作が難しいので使いこなせず「受け入れられるかな?」と思うところはあったのですが、そこはお客様の反応を見てみようかなと、GOサインを出しました。空中バウンド誘発技を決めると、テクニカルな感じがして気持ちいいですし、上級者向けのシステムとして、楽しい要素だと思っています。

――また、今回ダウンからの“強制起こし”は廃止になっているのでしょうか?

新堀 いえ、正確に言うと、強制起こしは廃止にはなっていません。条件がわかりにくくなっていることと、単発でできなくなっただけで、じつは可能です。ただそこは今後、調整を加えていきたいと思っています。強制起こしのせいでゲームから去ってしまったプレイヤーがいることも把握していますから、そこは慎重に調整していきたいです。

――起き上がりは確かに早くなり、ダウン後の攻防がスッキリしましたね。

新堀 『DOA6』は、いわゆる“起き攻め”など、ダウン後の攻防よりもむしろ、起き上がってからの攻防を楽しんでほしいゲームです。ただ、起き上がり関連のシチュエーションは、少し減らし過ぎたかなとは思っています。後ろ起き上がりか、ダウンしっぱなしが最適行動になってしまっていて、そこは今後少し手を入れていく予定です。

――まだまだ、細かく詰める部分があると。

新堀 バランス調整は難しいです。『DOA5』も、何年もかけてようやく最高のバランスにできたと思っているので、『DOA5』と同じくらいの時間は掛かると思います。対戦格闘以外のゲームでも、いまはじっくりじっくりアップデートを重ねる時代ですから。

――あと、マニアックなお話なのですが……。『DOA』シリーズは攻撃の出掛かりフレームと、攻撃判定の発生フレームに表示が分かれていますよね。たとえば10フレームの有利を取っても、10フレームの打撃技は攻撃判定に+2フレームして考えなくてはいけないので、実際は12フレームの有利を取らないと攻撃が確定しない、という要素がありますよね。そして投げは、+2ではなく+1フレームになると。そこを今回の『DOA6』で、よりわかりやすくしようと考えたりはしましたか?

新堀 そこを変更しようというのは、シリーズ作品を開発するたびに、毎回考えています。ただ、それをやると、『DOA』というゲーム自体に大きなシステムの変革が必要になります。打撃をガードするには、そのフレーム内でガードができる仕組みがある以上、+1フレームが必要です。そして、ガードの前には必ずニュートラルの操作が挟まる仕組みなので、+2フレームが必要となります。投げはガードが関係ないので、+1フレームでいいというわけです。『DOA』の爽快な操作感を変えることなく、ほかの対戦格闘ゲームのように、10フレームの有利を取ったら10フレームの技が確定する、というようにするには、非常に難しいのです。また、初心者にはあまり関係のない話ですし、ここまでの知識がある上級者の方であれば、すぐに+2、+1フレームの法則を覚えると思うんです。そのため、ほかの実装項目を犠牲にしてここに膨大な時間を掛けるわけにはいかないと判断し、そのままにしています。

――なるほど、そこまで根深い問題だったのですね。フレームと言えば、トレーニングモードは今回も、充実しすぎなほどに情報が表示されますよね。

新堀 本当は、もっとすごいトレーニングモードにしたかったんです。たとえば、相手の技をガードしたら“この技で反撃できますよ”という、いわゆる“確定反撃”のリストが表示されるですとか、浮かせたら「この技が入る」と、コンボルートが全部表示されるですとか。実現するのは難しいものもありますが、アイデアは多いです。ただ、対戦格闘ゲームは“研究する”ということも重要ですから、その楽しさを奪わないようにはしたいと思います。

今後の展開について

――先日発表された“ワールドツアー大会”ですが、構想はどういったものになるのでしょうか?

新堀 世界各国の何ヵ所かの会場と、オンラインで大会を開き、そのポイントを競って、最後のグランドファイナルで決勝を行う、といった、ほかの作品でも採用されているワールドツアー大会に近いものを予定しています。まだ、会場がどれくらいの規模のものになるのかですとか、まだまだ未定なところが多いです。ただ、“プロ”ツアーではないので、一般の方々でもチャンスがあるのがポイントです。どなたでも挑戦できる、世界大会を目指しています。

――また、『ザ・キング・オブ・ファイターズ』(『KOF』)シリーズと前作に続き再度コラボが決定し、不知火舞と、もうひとりのファイターの参戦が発表されていますが、どういった経緯でコラボが決定したのでしょうか?

新堀 『DOA5 ラスト ラウンド』では、『KOF 2000』とコラボしましたが、不知火舞が入ったことで、新規のプレイヤーがとても増えて、全体的な売り上げも大きく上がりました。この実績があるので、相当の人気があることがすでに証明されているんです。ということで、ぜひ1発目の追加キャラクターにということでSNKさんにお願いし、実現しました。今回は『KOF XIV』とのコラボですので、きっと最新の技を持つ不知火舞が登場するでしょう。

――ちなみに、もうひとりのファイターは……?

新堀 男か女かすら、いまは何も言えません(笑)。『KOF XIV』にはたくさんのキャラクターがいるので、ぜひそこはユーザーの皆さんに想像して楽しんでほしいなと。

――たしかにアテナやクーラみたいな美少女を出すのか、それとも草薙京や八神庵はやっぱり欲しい! みたいな議論は楽しいですよね。

新堀 全キャラクターが魅力的なので、誰にするのかで本当に迷いました、とだけは言っておきます!

――期待が高まりますね。また、最初の追加コスチュームが、いきなりウェディングコスチュームなのは驚きました。

新堀 これはもうプレイヤー待望の衣装で、これまでも要望がメチャクチャ多かったんです。以前、『DOA5』でハロウィンコスチュームを出したのですが、ヒトミだけウェディングチックな衣装だったんです。そしたら「全員にくれ!」という意見が多数出たんです。『DOA5』での実装も考えていましたが、『DOA6』まで取っておきました。ようやくこれで皆さん“俺の嫁”宣言をしていただければと(笑)。

――クールな衣装もいいですが、方向性としてはキュートなものやセクシーなものも、今後どんどん出るということですね。

新堀 前作以上にバリエーション豊かにしていこうと思っていますので、ぜひ今後の追加コスチュームにも期待してください。

発売後の新堀氏に訊く!

 最後に、発売を迎えてから2週間以上経過し、現状プレイヤーから出ている意見などを中心に、新堀氏にメールインタビューを行った。その模様をお届けしよう。

Q.現状、キャラクターの技リストに、技名が書かれていませんよね。「技名を知りたい!」と思っている人も多いと思うのですが、後日追加する予定はありますか?

新堀 やはり技名が気になる人って大勢いるんですね。私も技名という文化が好きでぜひ公開したいので、表示を入れる隙をうかがっていますが、いまはお約束できない状況です。

 技名について少し語らせていただくと、私自身、かなりこだわりのある部分なんです。『DOA5』以降の創作技(『DOA5』の開発スタッフが考案した技)の大半はみずから考えましたが、じつは創作技の名前の大半も私が考えたものです。ディエゴの技名はアメリカ人のスタッフと私でいっしょに考えたものですが、きちんと性格まで意識しました。スラングっぽくかっこよくて気に入っています。

 技名は、そのキャラが気に入ってくれるかとか、イメージして考えていますので、ストーリーを考えるのと同じくらい楽しいです。バースの“マッスルジャッジメント”のようにSNSで技名を紹介するとか、何か考えてみます。NiCOなどはひとつも知られていませんので、私も悔しいですし。

Q.コスチューム設計図のドロップ倍率は、今後も変わるのでしょうか?

新堀 コスチュームの設計図は、最終調整がお客さまが望むものとは違っていたことを、多くの方からお叱りを受けて知りました。もっと楽しんでいただくつもりだったので、とても反省しています。

 今後入手量が下がることはありません。よりいいものにするために、今後着実にやっていこうと思います。

Q.後日実装予定のロビーマッチは、待ち望んでいるプレイヤーも多いと思います。なぜ、後日配信という形になったのでしょうか?

新堀 理由は、開発の進捗が予想よりも遅れているためです。本作ではオンライン部分にも大きな変更が入っていて、悪い環境でない限りは『DOA5 ラスト ラウンド』よりも通信ラグが小さかったり、対戦が快適に行えているはずです。

 『DOA4』から『DOA5 ラスト ラウンド』のロビーマッチまで採用していた方式に“とても重い処理”が入っていたため、今回それらを取り除き、新しい手法にチャレンジしたのですが、思いのほか時間がかかっています。担当スタッフは格闘ゲームが好きで、お客様によりよい対戦環境を、と奮闘しているところです。いいものをお届けしますので、もうしばらくお待ちください。

Q.『DOA6 基本無料版』は、どれくらい無料で遊べるのでしょうか?

新堀 無料でもけっこう遊べます。ステージはいまあるものはすべて使えますし、ストーリー以外のゲームモードもすべて楽しめます。トレーニングだろうがオンラインだろうが、DOAクエストだろうが、DOAセントラルだろうが、です。ストーリーの序章が体験できますし、キャラクターはかすみ、ヒトミ、バース、ディエゴの4人が使えます。

 かすみは主人公にして、パンチボタン連打だけでも結構戦える強いキャラだからということで選びました。本作の看板娘ですので、まずはかすみから使ってほしいです。ヒトミは初心者向けかつ基本から応用まで詰まっていて、『DOA5 ラスト ラウンド』よりも使いやすく調整してあるため。チュートリアルの主役でもあります。ディエゴも初心者向けだからです。新キャラではありますが、“身近なキャラ”を目指したので、無料でも使えるようにしてあります。バースについては悩みましたが、巨体の投げキャラがひとりほしかった。そうしたらバースしかいませんよね。

Q.最後に、読者の方々と、『DOA6』プレイヤーの皆さんにメッセージをお願いいたします。

新堀 お客様から多くの叱咤激励をいただき、たいへんありがたく思っています。より楽しんでいただけるよう、日々勉強しながら実装やブラッシュアップを続けていますので、引き続き『DOA6』をお楽しみいただければと思います。基本無料版でも多くのことを楽しめるようになっているので、まだ触ったことのない方はぜひお試しください!

 また、ワールドチャンピオンシップのほうも準備が進んでおります。こちらは賞金総額1000万円と、『DOA』史上最大の金額となっていますので、腕を磨いて待っていてください!

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2019-03-15 09:37:00Z
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