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悪性黒色腫のBRAF・MEKを同時に阻害する併用療法に第2の選択肢 - 日経メディカル

2019/3/29

北村 正樹(東京慈恵会医科大学附属病院薬剤部)

 2019年2月26日、抗悪性腫瘍薬エンコラフェニブ(商品名ビラフトビカプセル50mg)とビニメチニブメクトビ錠15mg)が薬価収載と同時に発売された。両薬剤は、1月8日に製造販売が承認されていた。適応は「BRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な悪性黒色腫」、用法用量は「両薬剤の併用で、エンコラフェニブを1日1回450mg、ビニメチニブを1回45mgで1日2回投与。いずれも患者の状態により適宜減量」となっている。

 悪性黒色腫は、皮膚の色素を産生する母斑細胞が悪性化した腫瘍であり、皮膚癌の中で最も悪性度が高いとされている。臨床症状として、多彩で黒色調の色素斑や腫瘤が認められ、進行速度や症状によって大きく4つの病型(末端黒子型、結節型、表在拡大型、悪性黒子型)に分類される。早期段階で治療すれば大部分が治癒可能だが、皮膚やリンパ節などに転移を認めるIV期まで進行すると、5年生存率は10%前後になるとの報告もある。他の癌と同様に、早期発見、早期治療が最も重要である。

 現在の治療法としては、摘出手術などの外科療法の他に、速中性子線や重粒子線を用いた放射線療法、温熱療法、免疫療法、化学療法などが試みられている。日本では従来、進行性の悪性黒色腫に対する標準化学療法は、抗悪性腫瘍薬ダカルバジンの単独療法のみであったが、近年、新しい作用機序を有する分子標的治療薬が臨床使用されるようになった。

 分子標的治療薬には、抗PD-1抗体ニボルマブ(オプジーボ)およびペムブロリズマブ(キイトルーダ)、抗CTLA-4抗体イピリムマブ(ヤーボイ)といったヒト型モノクローナル抗体や、BRAF阻害薬ベムラフェニブ(ゼルボラフ)、ダブラフェニブ(タフィンラー)などがある。BRAF阻害薬ダブラフェニブは、マイトジェン活性化細胞外シグナル関連キナーゼ(MEK)である阻害薬トラメチニブ(メキニスト)と併用して使用する。

 BRAFは、種々の癌細胞の分化・増殖において重要なシグナル伝達経路である、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路を構成するキナーゼ蛋白質の1つである。欧米では悪性黒色腫の40~50%に、BRAFのアミノ酸配列600番目のコドンに変異を有するBRAF V600遺伝子変異が認められると報告されており、BRAF V600遺伝子変異によってMAPK経路が恒常的に活性化される。これにより、MAPK経路下流の細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)およびMEKが活性化することで、細胞に異常増殖などを引き起こすと考えられている。

 エンコラフェニブは3番目となるBRAF阻害薬であり、ビニメチニブは2番目となるMEK阻害薬である。in vitroでは、エンコラフェニブ/ビニメチニブ併用により、MAPK経路上のBRAFおよびMEKを同時に阻害することで、BRAF V600遺伝子変異を有するヒト悪性黒色腫細胞株の増殖が抑制された。日本人を含むBRAF V600E/K変異を有する根治切除不能な悪性黒色腫患者を対象とした国際共同第3相試験(対照:ベムラフェニブおよびエンコラフェニブ単独投与)において、エンコラフェニブ/ビニメチニブ併用投与の有効性(無増悪生存期間の延長)と安全性が確認された。海外では、2019年1月現在、米国および欧州で承認されている。

 国際共同第3相試験では、副作用(臨床検査値異常を含む)が88.0%に認められている。主なものは悪心(30.7%)、下痢(27.1%)、疲労(25.0%)、血中CK(CPK)増加(21.4%)などであり、重大な副作用として皮膚悪性腫瘍、眼障害、心機能障害、肝機能障害、横紋筋融解症、高血圧、高血圧クリーゼ、出血、手掌・足底発赤知覚不全症候群が報告されている。

 薬剤投与中に副作用が発現した場合には、休薬、減量または中止する。減量して投与する場合の詳細な用量調節基準については、添付文書を参照することが必要である。

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https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/drug/update/201903/560362.html

2019-03-28 15:16:48Z
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