もしも1999年のインターネットをサーフできるなら?『Hypnospace Outlaw』 インターネット・ディテクティブ・ゲーム - Part 1
帰ることができる。企業が大まじめに資金を投入してこしらえた、外見は美しいが伝わってくるものはなにもないウェブサイトが横溢する2019年のインターネットではなく、あなたやわたしのような市井の人々が、自由に、つまり輝かしいhtml4.0をベースにいちから創造した、宝石からごみくずまでがおなじショウ・ケースに並んでいた、あの1999年のインターネットに――それも、眠りのなかで。
マーチャントソフト社が開発した「Hypnospace Headband™」は、頭につけて眠るだけで、専用のウェブ「ヒプノスペース」に接続できる革新的なデバイスだ。あなたはこのヘッドバンドの「Enforcer Edition」、つまり警官用の特殊仕様を用いてネットにダイブし、著作権侵害、ネットいじめやセクシャルなものを含むハラスメント行為、ウイルスやマルウェアなどの悪意あるソフトウェアの頒布、USDなどのリアル・マネーによる売買といった、ヒプノスペースのTOS違反行為を、きびしく監視していくことになる。
ただ、現実世界のおまわりさんが巡回中にダンキン・ドーナツをぱくつく権利をもっているように、このすてきなインターネットの監視員であるあなたも、バーチャル・ペットやウォールペーパーをダウンロードしてデスクトップを飾ったり、MIDI音源やもっと多様な音を出せる新しいファイル・フォーマットの音楽を聴いたり、海の物とも山の物ともつかぬプログラムをダウンロードして、任意に実行する権利がある。日々、10代から99歳までのネット住人たちの戯言をチェックしつづけるのだから、それくらいの自由はあってしかるべきだ。
カテゴリーというよりもコミュニティの気質ごとに区分けされたウェブの表層だけをさまよっているうちに見つけられるのは、そうすることが違法行為だと知らない30歳以上の無知なひとびとによる、1962年に出版されて大人気を博した「おさかなグーパー刑事(でか)」のかわいらしい画像の無断使用くらいのものだろう。あるいは、意中の女の子の前で自分を大きく見せたくてたまらない10代の少年によるネットいじめの現場とか、スピリチュアル系のおばさんがセラピー料金として仮想通貨「ヒプノコイン」ではなく、USDを請求している隠しサイトくらいのものだろう。
それも仕方のないことだ。このウェブはあまりにも複雑に入り組んでいて、どこが表層でどこが深層なのか、初見ではまったくわからない。人畜無害に見えた少女のプロフィールから、彼女の制作した「絵本」を回覧すると、おそろしいゴアがふんだんにちりばめられた、ダークウェブでカルト的人気を誇るゲームブックにぶち当たる。ホットドッグ屋のジョーク・プログラムのせいで、なんの役にも立たないホットドッグのアイコンがデスクトップにあふれかえる。気がつくとポケモンを集めはじめている。アメリカの国旗とハーレー・ダビットソンの画像を自分のページに無邪気に貼り付けているテキサス在住の50代の右翼の、30年をともにした伴侶を喪った、真剣な悲しみを綴る文章に出会ってしまう。
合衆国の少なくとも数万人が参加しているこのウェブは、参加者全員の眠りのうちに紡ぎ出されたコードやイメージの複雑かつ有機的なマトリクスであり、事実上際限がない(ように感じられる)。監視員としてますます真剣にページを回覧していくうち、デスクトップに放置されていたあなたのバーチャル・ペットは、ピクセルで描かれたうんちまみれになって、まちがいなく餓死することになるだろう。マウスポインタで腹をくすぐられることを無上の喜びとしていた、てきとうな名前をつけた愛犬(あるいはピンクのイカ)が逝くとき、あなたはもう二度と、世話を焼くことができないバーチャル・ペットなど飼わないと心に決めるが、その数時間後には、やむぬやまれぬ事情からまたヒプノコインを支払って、新しいペットを手に入れているだろう。
そうして仕事にも慣れ始めたころ、もちろんそう来なくてはならないが、ハッカーが、あなたが守るべきヒプノスペースを攻撃しはじめる 。 ショッキングなイメージのポップアップやブラクラはまだ無邪気なほうだが、OSを汚染するウイルスとなると、話はべつだ 。
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https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190317-00000001-ignjapan-game
2019-03-17 07:03:00Z
52781615689022
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