ブラックホールの撮影が難しかったのは、自ら光や電波を発しない上、地球からの距離が遠く、みかけの大きさが非常に小さいからだ。国際研究チームは複数の電波望遠鏡を連携させて地球規模の巨大アンテナと同等の能力を実現する「VLBI(超長基線電波干渉計)」という技術で、人間なら「視力300万」の解像力を達成し、ブラックホール周辺を精細に観測した。
チームは今回、撮影に成功したM87銀河の中心部のほか、われわれの太陽系がある天の川銀河中心の「いて座Aスター」を観測対象に選んだ。この二つは理論上、地球から最も大きく見えると予測されるブラックホールだが、それでも月面上のテニスボールを地球から見分けるくらいの解像力が必要だ。
電波望遠鏡の解像度は、アンテナの直径が大きいほど、また観測する電波の波長が短いほど向上する。チームは、6カ所の電波望遠鏡を連携させてVLBIの技術を応用し、実質的に直径1万キロの巨大望遠鏡として使った。さらに通信で使う電波帯の100分の1というごく短い波長(1・3ミリ)で観測し、M87での撮影に成功した。
今回の成果には、日本の研究者が大きく貢献している。観測対象のM87は、2011年に秦(はだ)和弘・国立天文台助教(宇宙物理学)らがブラックホール周辺から噴き出すジェットを初めて観測し、ジェットの構造を詳しく調べるなど、もともと日本の研究者が世界をリードしていた天体で、こうした知見が今回の観測に役立った。
約2年をかけたデータの解析や、画像を鮮明にする処理技術などでも貢献した。今回の観測に合わせて、M87を電波以外の可視光やX線、ガンマ線などで観測した世界中のデータをとりまとめ、撮影の成功を後押しした。
秦助教は「ブラックホールが宇宙に存在する疑いのない証拠となり、単なるミステリアスな存在ではなくなった。宇宙の謎の解明や理解にはずみがつく成果だ」と話した。
https://mainichi.jp/articles/20190410/k00/00m/040/260000c
2019-04-10 13:28:00Z
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