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太陽系探査に前進 「はやぶさ2」人工クレーター実験成功 - 毎日新聞 - 毎日新聞

記者会見を終え、実験成功を示す画像とともに笑顔でポーズをとるJAXA宇宙研究所の津田雄一・はやぶさ2プロジェクトマネジャー(中央右)ら=相模原市中央区で2019年4月5日午後5時40分、長谷川直亮撮影

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の探査機「はやぶさ2」が5日、小惑星リュウグウに人工クレーターを作る実験を成功させた。はやぶさ2の任務で最難関とされる運用を乗り越え、日本の太陽系探査に大きな一歩を記した。JAXAは今後、形成されたとみられるクレーターを詳細に観測し、太陽系の惑星や小惑星が誕生した経緯を知る手がかりにしたい考えだ。【池田知広】

分析重ね「G難度」クリア

 「本日、私たちは宇宙探査の新しい手段を確立しました」。成功を確認した後の記者会見で、ミッションを率いる津田雄一プロジェクトマネジャーは誇らしげに切り出した。上空で衝突装置を爆発させ、銅の塊をリュウグウの表面にぶつけた今回の実験は、世界でも前例のない任務だった。

 今回の実験はプロジェクトのメンバー間で体操競技の難しい技に例えて「G難度」と言われていた。強力な爆薬を使うため、失敗すれば探査機が破壊される恐れがあった。衝突装置や小型カメラの切り離しのタイミングがずれると、あらぬ方向に銅の塊が飛んでいったり、撮影した画像に何も写らなかったりする可能性もあった。津田さんは「(探査機に)『とにかく生きていてよかった』と声をかけたい」と安堵(あんど)した。

 メンバーを特に喜ばせたのは、小型カメラで砂やちりなどが放出される様子をしっかりと撮影できたことだった。カメラを開発したJAXAの沢田弘崇・主任研究開発員は「(小惑星の陰に退避した)はやぶさ2が見えなかった様子を、小さな目が捉えた。言葉が出ないくらい感動した」と喜んだ。画像を確認できた瞬間、管制室周辺は「歓喜の渦に包まれた」(津田さん)という。

 小天体での同様の実験には、米航空宇宙局(NASA)が彗星(すいせい)に衝突機をぶつけた実験「ディープ・インパクト」があるが、舞い上がった物質を観測しただけで、衝突地点付近の詳細な観測はされていない。JAXAは4月下旬に衝突地点付近を上空から詳細に観測する予定だ。津田さんは「(小天体に)穴を掘る手法を確立でき、カメラによる撮影にも成功した。じっくり(クレーターの)状態も観察できる。誇れる結果だ」と話した。

 成功の要因について、JAXA宇宙科学研究所の久保田孝・研究総主幹は「(2月の)1回目の着陸を経て、リュウグウという相手と探査機自身のことを知り尽くした結果だった」と分析した。

 JAXAは現在、火星の衛星から試料を採取して帰還する火星衛星探査計画(MMX)や、月面にピンポイント着陸する小型月着陸実証機(SLIM)などの計画を進めている。今回、はやぶさ2で確立した技術はこれら計画の大きな後押しになる。

 太陽系探査に詳しい寺薗淳也・会津大准教授(惑星科学)は「ミッションは8合目まで来た。あとは帰還を確実にする段階だ」と評価。「衝突装置の運用で、日本は『お家芸』とも言える月・惑星探査における新たな武器を手に入れた。今後、いかに探査に応用し、諸外国との競争に勝ち抜けるかが重要になる」と指摘した。

「地球の水や有機物」の仮説検証の一助に

 クレーターを作る主な目的は、「太陽系の化石」とも呼ばれる小惑星で、太陽風や宇宙線で風化していない地下の岩石を表面に露出させることにある。地球の水や有機物は、誕生初期に小惑星が頻繁に衝突することでもたらされたという説があり、「新鮮な」岩石を上空から詳しく観測したり、地球に持ち帰って詳しく分析したりすることで、こうした説を検証できる可能性がある。

 リュウグウは色が黒っぽく、有機物が豊富な「C型」の小惑星に分類されている。ただこれまでの観測で、水が少なく、表面付近の岩石も頻繁に入れ替わっている可能性が高くなっている。火星と木星の間にある「ポラナ」か「オイラリア」という小惑星を母天体とし、これまでに2度の衝突・破壊と再集積を繰り返してきたとの仮説も立てられた。

 そうした状況で地下物質を採取する意義について、採取試料の分析を取りまとめる橘省吾・東京大教授(宇宙化学)は「地下物質を持ち帰ることで、仮説の正しさを議論できるようになる」と強調する。JAXAの吉川真ミッションマネジャーは「クレーター付近の岩石が採取できなくても、上空からの詳細な観測で、宇宙風化がどれほど表面物質の変質に影響しているかを調べられる」と話す。

 一方、クレーターが形成される様子や形状は、小惑星がどのように衝突と破壊を繰り返してきたかを知る手立てにもなる。衝突の様子をとらえた小型カメラを開発した荒川政彦・神戸大教授(惑星科学)は「小惑星は微惑星が衝突を受けて、再び成長してできた。実際の衝突を分析し、その様子を再現するのが目標」と狙いを語る。

 今回のカメラの画像によると、噴出物が非対称に出ていることから、大きな岩が近くにあるなど、不均一な表面の状態を反映している可能性があるという。

 衝突実験によって、リュウグウの強度や隙間(すきま)の度合いも今後、明らかになるとみられる。橘教授は「強度が分かれば、C型小惑星の物質が隕石(いんせき)やちりなど、どのような形で地球にもたらされたのか、理解が進むことになるのではないか」と指摘した。【池田知広】

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https://mainichi.jp/articles/20190405/k00/00m/040/326000c

2019-04-05 14:56:00Z
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